歯茎が赤く腫れてぶよぶよになるのは歯周病が進行しているサイン
1. 「歯茎がぶよぶよ…これって大丈夫?」という素朴な不安から
・赤く腫れたぶよぶよ歯茎は、体からの“異常のサイン”
朝起きて鏡を見ると、なんだか歯茎がぷっくりと腫れて赤みがかっている。「こんなにぶよぶよしてたっけ?」と、違和感を覚えた経験はありませんか?歯ぐきが腫れて柔らかくなっている状態は、体が出している異常のサインかもしれません。
健康な歯茎は、引き締まって淡いピンク色をしており、指で軽く触れても弾力があります。ところが、歯周病が進行すると、血流が増えた歯茎は赤く腫れ、ぶよぶよと柔らかくなってしまうのです。これは歯ぐきの内部で慢性的な炎症が起きている証拠でもあります。
・痛みがないからと油断しがちだが、実は病気が進行中
「腫れてるけど、痛くないし放っておこう」──これは多くの方がしてしまいがちな判断ですが、歯周病の怖いところはまさにここにあります。
歯周病は、初期〜中期にかけてほとんど痛みを感じません。進行は非常にゆるやかで、日常生活の中で気づかれにくいため、「なんとなく歯ぐきの調子が悪いな」と思いながらも、そのまま放置されてしまうケースが多いのです。
しかしその間にも、歯周病菌は歯と歯ぐきの間にある「歯周ポケット」に入り込み、歯を支える骨(歯槽骨)をじわじわと溶かしていきます。ぶよぶよした歯ぐきは、まさにその過程で炎症を起こし、膨張している状態。知らぬ間に病気が進行しているという現実を、多くの方が見落としてしまっています。
・歯周病は“静かに歯を失う”病気、その第一歩を見逃さないで
歯周病は、成人の約8割が何らかの症状を持っていると言われる「国民病」です。そしてその多くが、「気づかぬうちに」「痛みなく」「静かに進行する」という特徴を持っています。
赤く腫れた歯ぐき、ぶよぶよとした感触、歯磨きのたびに出る血…。それらはすべて、歯周病が始まっているサインです。早期に対応すれば、元の健康な状態へと改善できる可能性もありますが、放置すれば歯がグラグラしてきたり、最悪の場合は抜け落ちることも。
とくに中高年の方で、「最近歯ぐきがやわらかくなった気がする」「歯が長くなったように見える」といった変化を感じている方は要注意です。歯を失ってからでは遅いからこそ、“ちょっとした異変”を感じたときにこそ、歯科医院でのチェックが重要となります。
歯ぐきのぶよぶよ感に気づいた今こそが、歯を守るための第一歩。
「まだ大丈夫」と思わずに、ぜひお気軽にご相談ください。初期の歯周病であれば、痛みのない簡単な処置で健康を取り戻すことも十分に可能です。
2. 初診とカウンセリング──「今の歯茎の状態」をまず知ろう
・歯周ポケットの測定やレントゲンで進行度を把握
「歯茎がぶよぶよしている」「なんとなく違和感がある」——そんな漠然とした不安を抱えて来院される方は少なくありません。
初診時には、まず現在のお口の状態を正確に把握するための検査を行います。具体的には、歯ぐきの状態や歯の動き、歯周ポケットの深さを専用の器具で丁寧に測定します。この歯周ポケットの深さは、歯周病の進行具合を示す重要な指標のひとつです。
また、レントゲン撮影や必要に応じて歯科用CTを活用し、歯を支える骨(歯槽骨)がどれくらい減っているか、どこに炎症が広がっているかを確認します。見た目では分かりづらい部分まで立体的に確認することで、適切な診断と治療計画の土台が整うのです。
・出血の有無や歯の動揺など、見えないリスクを見つける
検査時には、歯ぐきを軽く触れるだけで出血するかどうかもチェックします。歯周病による炎症が進んでいる場合、出血は非常に起こりやすくなっており、これは“見えない炎症”が進行しているサインでもあります。
さらに、歯そのものが動いていないか、ぐらついていないかなど、目には見えない“支える力の衰え”も丁寧に確認します。こうした初診時のチェックによって、歯周病がどのステージにあるのか、今後どんな治療が必要なのかが見えてくるのです。
とくに「まだ痛みがない」「毎日歯磨きしているから大丈夫」と感じている方でも、実は中等度~重度まで進行しているケースも少なくありません。専門的な視点で正確に評価することは、歯を守るために欠かせないステップです。
・「どこまで治る?」「何が必要?」不安を丁寧にヒアリング
初診で多くの方が感じるのは、「自分の歯ぐき、どうなっているのかよく分からない」という不安です。当院では、検査結果だけを一方的に伝えるのではなく、患者さまの生活背景やご希望、不安な点も丁寧にうかがうことを大切にしています。
「抜歯せずに治せますか?」「どのくらい通えばいいんでしょうか?」「費用はどのくらいかかりますか?」といった疑問には、専門的な視点から分かりやすくお答えします。
また、治療にあたっては全身の健康状態も無視できません。糖尿病や高血圧などの持病、服用中の薬の有無などもカウンセリングで確認し、必要があれば医科との連携も視野に入れながら、リスクを最小限に抑えた計画を立てます。
歯周病の治療は「検査」と「理解」から始まります。今のご自身の歯ぐきの状態を知ることが、健康な口元への第一歩です。
痛みが出てからではなく、「ぶよぶよしている気がする…」という違和感の段階で受診することで、軽い処置だけで改善できる可能性もあります。気になるサインがあれば、どうかお気軽にご相談ください。
3. 精密検査と治療計画──歯周病の“設計図”を立てる
・歯石や炎症の部位を特定する精密検査
初診の基本検査を終えたあとは、より精度の高い診断のために「精密検査」を行います。これは、歯周病の進行度や歯を支える組織のダメージを詳細に確認するために不可欠な工程です。
具体的には、歯周ポケットの深さを全歯にわたり測定し、炎症が起きている部位や歯石の付着状況、歯の動揺度を細かくチェックしていきます。
また、歯ぐきの中に隠れた歯石(縁下歯石)や感染の程度を見極めるために、レントゲン写真を複数枚撮影することもあります。さらに必要に応じて、歯科用CTで歯槽骨の吸収の状態や歯根の形態まで立体的に確認することもあります。
これらの情報を組み合わせることで、症状の軽重を客観的に評価し、どの部位にどんな処置が必要か、どのくらいの治療期間がかかるのかを判断できるのです。
・治療期間や費用、治療の流れも具体的に説明
精密検査の結果が出たあとは、歯科医師が患者さまと一緒に治療計画を立てていきます。この際、専門用語を避けながら、できる限り分かりやすい言葉で現状を丁寧にご説明します。
「どの部位に問題があるのか」「どんな治療が必要なのか」「通院回数はどれくらいか」「費用の目安はどの程度か」などを、視覚的な資料や画像を使って具体的に共有いたします。
また、歯周病の進行具合によっては、すぐに外科処置が必要になるケースもあれば、まずは炎症をコントロールする初期治療から始めるケースもあります。
「一度で全部治す」のではなく、「段階を追って無理のない計画を立てる」ことが、歯周病治療の大きな特徴です。そのため、治療内容によっては数ヶ月〜半年以上に及ぶ場合もありますが、計画を共有したうえで一緒に進めていくことが大切です。
・無理にすすめられない安心のカウンセリング
当院では、精密検査の結果をもとにした治療計画を「押しつける」のではなく、「患者さまと一緒に決めていく」ことを大切にしています。
とくに歯周病治療は、患者さま自身の日々のケアや通院意欲も成果に大きく影響するため、一方的な治療方針ではうまくいかないことが多いのです。
そのため、治療の開始前には「本当にこの治療が必要なのか」「自分に続けられるペースか」「費用はどのくらいまでが妥当か」といったご相談にも、時間をかけてお応えしています。
もちろん、「治療は一度持ち帰って考えたい」「今回は検査だけ受けたい」というご希望にも柔軟に対応しています。
患者さまが納得できる治療こそが、歯周病を治す一番の近道です。
専門的な視点から導き出した治療プランと、ご本人のご希望やライフスタイルをすり合わせた「オーダーメイドの治療計画」を一緒に作っていきましょう。
4. 炎症が強い場合──すぐに治療できないこともあります
・まずは炎症を抑える“初期治療”が大切
歯周病の検査を受けて「治療が必要」と診断されたとき、多くの患者さまが「すぐに治療を始めるのか」と思われるかもしれません。ですが、実は炎症が強く出ている場合には、すぐに外科処置や本格治療に入らないことが多いのです。
なぜなら、腫れや出血がひどい状態では、歯ぐきが敏感になっており、麻酔の効きも悪く、外科的な処置による負担が大きくなってしまうからです。
また、炎症を抱えた状態では、治療をしても十分な効果が得られないことがあるため、まずは炎症を抑える「初期治療(プラークコントロール・スケーリング)」からスタートするのが基本となります。
この段階では、歯科衛生士が専用の器具を使って、歯の表面や歯周ポケットの浅い部分に付着したプラーク(歯垢)や歯石を丁寧に除去していきます。それによって炎症の原因となる細菌の数を減らし、歯ぐきの腫れや出血が改善されていきます。
・抜歯や歯ぐきの切開が必要な場合も、段階的に進める
歯周病が進行していて、すでに歯がぐらついていたり、歯ぐきの中に深い感染がある場合には、抜歯や歯周外科処置(歯ぐきの切開など)が必要になることもあります。
しかしその場合も、いきなり外科的な処置に進むのではなく、まずは感染コントロールや炎症の沈静化を優先し、治療のタイミングを慎重に見極めながら段階的に対応していきます。
たとえば「抜歯が必要」と判断された場合でも、抜いた直後にすぐインプラントやブリッジ治療に移行できるとは限りません。抜歯後の治癒をしっかり待つ必要がありますし、骨や歯ぐきの再生を促す処置が求められるケースもあるのです。
こうした一連の流れを見ても、歯周病治療には“時間をかけて整える”というプロセスがとても重要であることが分かります。焦って進めることよりも、丁寧に土台を整えることが、最終的な結果につながるのです。
・無理のないスケジュールで、治療の質を高める
当院では、患者さまの体調やライフスタイル、ご希望に合わせて無理のない治療スケジュールを組み立てています。
「仕事が忙しくて何度も通えない」「できるだけ痛みの少ない方法がいい」「高齢なので体に負担をかけたくない」といった声にも配慮しながら、治療の質と患者さまの快適さを両立できるよう工夫しています。
特に歯周病の治療は、1回きりの通院で完結するものではありません。だからこそ、「どの段階で何をするのか」を患者さまご自身も把握し、納得しながら進めていくことが非常に大切なのです。
一見遠回りに感じるかもしれませんが、炎症をしっかりと抑えたうえで次のステップに進むことで、最終的には歯ぐきの回復力が高まり、治療後の結果や安定性にも良い影響をもたらします。
すぐに治療できないからといって、治療が遅れているわけではありません。
むしろ、その一歩一歩が“歯を守る本当の治療”の始まりです。歯ぐきの腫れやぶよぶよした感触が気になる方は、まずは専門的なチェックを受けてみてください。
治療を焦らず、でも確実に前へ進めるよう、私たちがしっかりとサポートいたします。
5. 歯石除去(スケーリング)と根面のクリーニング
・歯周病の主原因「歯垢・歯石」を徹底的に除去
歯周病の治療において、最も基本でありながら最も重要なステップのひとつが、「歯垢(プラーク)と歯石の除去」です。これをスケーリング(歯石除去)と呼びます。
歯周病は、歯と歯ぐきの間にたまったプラーク中の細菌によって、歯ぐきに炎症が起こる病気です。そして、このプラークが時間とともに硬くなって石灰化したものが「歯石」。
歯石は歯ブラシでは取り除くことができず、さらにその表面は細菌のすみかになっているため、除去せずに放置すればするほど、歯周病が深く進行してしまうのです。
そのため、歯周病治療の第一歩として、専用の器具や超音波スケーラーを用いて、歯の表面にこびりついた歯石やバイオフィルムを徹底的に取り除く処置が行われます。これにより、歯ぐきの炎症は徐々に改善し、ぶよぶよしていた歯ぐきが引き締まっていくのです。
・歯ぐきの中まで清掃する「ルートプレーニング」とは?
スケーリングによって表面の歯石を除去したあとは、歯ぐきの中の“見えない部分”にもアプローチしていきます。それがルートプレーニング(根面清掃)です。
歯周病が進行すると、歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」が形成され、そこに歯石や感染物質がたまります。こうした歯の根の表面にこびりついた硬い歯石や毒素を、キュレットという専用の器具で手作業で丁寧に削り取っていくのです。
根面の表面はザラついていることが多く、そのままにしておくと細菌が再び付着しやすくなってしまいます。ルートプレーニングでは、表面をなめらかに整えることで、細菌の再付着を防ぎ、歯ぐきが再び歯に密着しやすくなる状態をつくります。
この処置は、麻酔を用いて数回に分けて行うことが一般的です。治療中の痛みは少なく、処置後に腫れや違和感が出ることもありますが、多くの方が日常生活に支障なく受けられる程度です。
・歯ぐきの変化が“目に見えてわかる”嬉しい瞬間
スケーリングやルートプレーニングをしっかりと行うことで、多くの患者さまが「歯ぐきが引き締まった」「ぶよぶよした感じがなくなった」「出血しなくなった」といった、目に見える変化を実感されます。
腫れが引き、歯ぐきの色が健康的な薄いピンク色に戻る様子は、患者さまにとっても大きな安心感につながります。
また、歯ぐきが引き締まることで、口の中がスッキリと感じられたり、口臭の改善を実感する方もいらっしゃいます。これは、歯周病の原因である細菌の住処が減ったことによる自然な反応です。
「歯ぐきがぶよぶよしていたのは、こんなに汚れがたまっていたからなんだ…」
そう気づかれる方も多く、治療に対するモチベーションが高まるきっかけにもなります。
歯周病の治療は、“歯石除去から始まる”といっても過言ではありません。定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、炎症の予防だけでなく、再発の防止にもつながります。
歯ぐきの腫れやぶよぶよ感が気になったら、まずは一度プロによるケアを体験してみてください。あなたの歯ぐきに、本来の健康を取り戻す第一歩になるはずです。
6. 改善しない部分には歯周外科治療を選択
・歯周ポケットが深いと、通常のクリーニングだけでは不十分
スケーリングやルートプレーニングによって多くの症状が改善される一方で、一部の部位では十分に炎症が引かず、歯ぐきの奥深くに感染が残ってしまうケースもあります。
これは、歯周ポケットが非常に深く、器具が物理的に届かないほど進行してしまっている状態で、いわゆる中等度〜重度の歯周病に該当します。
このような部位には、歯周外科治療を行うことで、より確実に病巣を取り除き、歯周組織の健康を回復させる必要があります。外科といっても、大きな手術ではなく、歯ぐきを部分的に切開して中を丁寧に清掃する治療です。
・代表的な「フラップ手術」で見えない感染源にアプローチ
歯周外科治療の代表的な方法がフラップ手術(FOP=歯肉剥離掻爬術)です。
これは、歯ぐきを部分的に切開し、歯根の表面や歯槽骨の状態を直接確認しながら、深部に残った歯石や感染組織をしっかり除去する方法です。
通常のスケーリングでは届かない4mm以上の歯周ポケットにも対応でき、重度の歯周病でも改善が期待できます。
処置は局所麻酔下で行われ、痛みは最小限に抑えられています。出血もごく少なく、術後は1週間程度で縫合糸を外すことができます。腫れや違和感は個人差がありますが、多くの患者さまが数日で日常生活に復帰されています。
また、必要に応じて骨の再生を促す薬剤(エムドゲイン®など)を併用したり、人工骨を用いる再生療法を選択することもあります。これらはすべて、患者さまの症状とご希望を踏まえたうえで、無理のない範囲でご提案いたします。
・歯を残すための「最終手段」ではなく“選べる選択肢”として
「手術」と聞くと不安に感じられる方も多いと思いますが、歯周外科治療は歯を失わずに済む可能性を広げるための有効な手段です。
歯周病が進行してしまった部分も、丁寧に清掃し、再び歯ぐきが歯に密着する環境を整えることで、噛む力や見た目の安定を取り戻すことができます。
もちろん、全てのケースで手術が必要なわけではありません。歯周病の治療は段階的に行われ、「どこまで改善しているか」「患者さま自身のご希望はどうか」を慎重に判断しながら進めていきます。
そのため、私たちは「手術をすすめる」のではなく、「選択肢のひとつとしてご説明する」というスタンスを大切にしています。治療の内容や目的をご理解いただき、納得のうえで選んでいただくことで、安心して前向きに治療に取り組んでいただけます。
ぶよぶよと腫れていた歯ぐきが引き締まり、歯をしっかりと支えてくれる。
歯周外科治療には、そんな本来の健康な口腔状態を取り戻す力があります。「もう無理かも…」と感じていても、決して諦めないでください。
私たちは、できる限りご自身の歯を守り抜くために、さまざまな選択肢をご用意してお待ちしています。
7. 治ったように見えても“油断は禁物”な理由
・歯ぐきの見た目が良くなっても、根本的な完治ではない
歯周病治療を進めると、歯ぐきの腫れや出血が治まり、見た目も引き締まった健康的な状態になります。
「これで治った!」と感じる方も多くいらっしゃいますが、実はこの時点では“完治”とは言えないというのが、歯周病治療の難しさでもあります。
歯周病は、風邪のように「薬を飲んで治る」病気ではありません。一度破壊された歯周組織(歯を支える骨や歯ぐきの結合組織)は、自然に元通りになることは少なく、たとえ症状が落ち着いたように見えても、病気としての“素地”は口の中に残ったままなのです。
とくに、歯周ポケットが深かった部位や、歯並び・噛み合わせに問題がある箇所は再発しやすく、油断するとすぐに炎症がぶり返してしまいます。見た目に惑わされず、継続的なケアと定期管理が必要です。
・歯周病は「生活習慣病」——再発しやすい理由とは?
歯周病が「慢性疾患」や「生活習慣病」と呼ばれるのは、再発しやすい性質を持っているからです。
たとえば、糖尿病や高血圧と同じように、症状が一時的に落ち着いても、生活習慣や体調、ストレスなどの影響で再び悪化することがあります。
歯周病も同様で、毎日の歯みがきの精度、食生活、喫煙、睡眠不足、さらには体の免疫力の低下など、さまざまな要素が再発に影響します。
せっかく治療で良くなったとしても、生活習慣が変わらなければ、同じ場所に再び歯石がたまり、歯ぐきが腫れてしまうのです。
また、加齢による歯ぐきの退縮や、歯ぎしり・食いしばりといった力の影響も見過ごせません。こうした“日常の小さな積み重ね”が、じわじわと歯周組織にダメージを与えていきます。
・「治療が終わった=卒業」ではなく、ここからがスタート
歯周病治療を終えた方にお伝えしたいのは、「本当の意味での治療のスタートは、ここから」ということです。
治療が終わった後に「もう歯医者に行かなくて大丈夫」と思ってしまうと、知らないうちに再発し、以前より悪化した状態で来院されるケースも少なくありません。
当院では、治療が完了した方に対して、再発予防のための定期的なメンテナンスをご案内しています。
具体的には、3ヶ月〜半年に1回の間隔で、歯科衛生士によるプロフェッショナルケア(PMTC)や、歯周ポケットのチェック、生活習慣の見直しなどを行いながら、病気の再発を未然に防ぐ取り組みを続けています。
患者さまからは「歯ぐきの状態が分かると安心」「専門家に診てもらえるから続けやすい」といった声も多く、再発なく長く健康な状態を保たれている方も多数いらっしゃいます。
歯周病は“治って終わり”ではなく、“治して守る”病気です。
治療がうまくいった今こそ、これまで以上にご自身の口の健康を見つめ直すチャンスです。再発を防ぎ、10年後、20年後もご自身の歯で食事や会話を楽しめるよう、ぜひ今の健康を“維持する通院”を取り入れてみてください。
8. メンテナンスとセルフケアで再発を防ぐ
・歯科衛生士による専門的なケア(PMTC)が効果的
歯周病の治療が一通り終わったあと、多くの方が「これでもう安心」と思いがちです。しかし、歯周病は再発しやすい病気。一度症状が落ち着いても、放置してしまうと数ヶ月のうちに炎症が再び始まることも珍しくありません。
そこで重要になるのが、治療後の「メンテナンス」です。これは、定期的に歯科医院でお口の状態をチェックし、必要に応じてプロフェッショナルクリーニングを受けること。
当院では、歯科衛生士による専門的なメンテナンスプログラム(PMTC=Professional Mechanical Tooth Cleaning)を実施しています。
PMTCでは、患者さまご自身では届きにくい部分や、歯周ポケットの入り口付近、被せ物やブリッジの周辺などに残ったプラーク・歯石を、専用の器具で徹底的に除去。歯面をなめらかに仕上げ、再び汚れがつきにくい状態へと導きます。
これにより、炎症や口臭の再発を防ぎ、歯ぐきの健康を長期間キープすることができます。処置時間は30分〜1時間ほど。痛みも少なく、終わった後の爽快感から「これが楽しみで通っている」という患者さまもいらっしゃいます。
・毎日の歯みがきに「ひと工夫」を加えるだけで差が出る
プロによるケアと同じくらい大切なのが、ご自宅でのセルフケアです。とくに歯周病の再発を防ぐためには、「どこまで細かく汚れを落とせるか」が重要になります。
毎日の歯みがきに加え、歯間ブラシやデンタルフロスを使用して、歯と歯の隙間や歯ぐきとの境目の汚れを取り除くことが理想的です。
また、歯ブラシの毛先が広がっていないか、力を入れすぎていないか、磨く順番にムラがないかなど、ご自身のブラッシング習慣を見直すだけでも改善の余地は大きくあります。
当院では、患者さま一人ひとりに合ったセルフケアの方法をお伝えする時間も設けており、「どうしても磨き残しやすい箇所」や「使いやすい補助器具」の提案など、日々のケアを継続しやすい形でサポートしています。
・“3ヶ月に1回”の習慣が、10年後の歯を守る
歯周病の進行スピードは人によって異なりますが、多くの場合、再発防止には3ヶ月に1回のメンテナンスが効果的だとされています。これは、プラークが歯石化し始めるタイミングと一致しており、この周期で専門ケアを行うことで、細菌の定着を未然に防ぐことができるからです。
もちろん、患者さまのリスクに応じてメンテナンスの頻度は調整可能です。糖尿病などの全身疾患がある方、喫煙習慣のある方、重度の歯周病を経験された方などは、1〜2ヶ月ごとの管理が必要になることもあります。
「通うのが面倒」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほんの30〜60分の定期管理を続けるだけで、歯を失うリスクを大幅に下げられるとしたら——その価値は非常に大きいはずです。
治療のゴールは、健康を取り戻したその瞬間ではなく、それを“守り続けること”。
毎日のセルフケアと、数ヶ月に1回のメンテナンスという“二人三脚”が、歯ぐきの健康を10年、20年と維持するカギになります。
「今は症状が落ち着いているから大丈夫」と思わず、ぜひこのタイミングで予防の習慣をスタートしてみてください。
9. 歯ぐきだけでなく“全身”に影響する歯周病
・歯周病菌は血流に乗って、全身へ広がる
「歯ぐきが腫れてるだけだから、大したことない」と思っていませんか?
実は、歯周病は“お口の中だけの問題”ではなく、全身の健康にまで深く関わっている病気だということが、近年の研究で次々と明らかになっています。
歯周病が進行すると、歯ぐきの血管から細菌や炎症物質が血流に乗って体内に入り込みます。これがやがて、血管や臓器に悪影響を及ぼし、さまざまな全身疾患のリスクを高めてしまうのです。
つまり、歯ぐきのぶよぶよとした炎症は、単なる“お口の異変”ではなく、体全体が発している異常のサインとも言えるのです。
・糖尿病、心筋梗塞、認知症…全身疾患との深い関係
歯周病と関連が深いとされる病気の代表格が糖尿病です。歯周病による慢性炎症は、インスリンの働きを妨げ、血糖コントロールを悪化させます。逆に、糖尿病のある方は免疫機能が低下しているため、歯周病が悪化しやすく、相互に悪影響を及ぼす「負のループ」に陥りやすいのです。
さらに、心筋梗塞や脳梗塞などの血管系疾患との関連も見逃せません。歯周病菌が血管に炎症を引き起こし、動脈硬化を進行させるリスクがあることが分かってきています。
また、近年注目されているのが認知症との関連性です。ある研究では、アルツハイマー型認知症の患者の脳内から歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)が検出され、歯周病が神経細胞にダメージを与える可能性が示唆されています。
このように、歯周病は一見「口だけの問題」のようでいて、全身に波及する“静かなリスク”を秘めているのです。
・高齢者の誤嚥性肺炎や妊婦の早産にも影響が
高齢者にとって歯周病がもたらすリスクとして特に注意したいのが、誤嚥性肺炎です。口腔内に歯周病菌が多いと、唾液や食べ物と一緒に肺に入り込み、肺に炎症を起こす原因となります。これは高齢者の死亡原因の上位にも挙げられる深刻な疾患です。
また、妊婦さんの場合は、歯周病が早産や低体重児出産のリスクを高めることが知られています。炎症によって放出される物質が子宮に影響を与えるとされており、妊娠中でも定期的な口腔管理が強く推奨されています。
このように、歯ぐきの腫れやぶよぶよとした感触を「見た目の問題」とだけ捉えるのではなく、体の健康を守る“入り口”としての口腔ケアの重要性を理解することが大切です。
「歯ぐきの腫れぐらいで病院に行くのは大げさ?」…そんなふうに感じる必要はありません。
歯周病の早期発見と治療は、歯を守るだけでなく、あなたの全身の健康を守ることにもつながっています。
気になる症状がある方は、ぜひ一度歯科医院で専門的なチェックを受けてみてください。それが、未来の健康を守る大きな一歩になるはずです。
10. 歯周病の治療期間はどれくらい?治るまでの目安
・軽度〜重度まで、症状によって大きく異なる
「歯周病って、どれくらい通えば治るの?」「いつまで治療が続くんだろう…」
このような疑問や不安を抱えている方は多いと思います。
しかし、実際の治療期間は人それぞれで、歯周病の進行度や治療内容によって大きく変わってきます。
たとえば、軽度の歯周病であれば、数回のクリーニングとブラッシング指導だけで炎症が改善し、1〜2ヶ月程度で治療が完了するケースもあります。一方で、中等度から重度の場合は、スケーリング・ルートプレーニング・外科処置・再評価と段階を追って治療するため、3ヶ月〜半年、場合によっては1年以上かかることもあります。
さらに、歯周病が原因で歯を失ってしまった場合は、インプラントやブリッジによる補綴治療を行う必要があり、その分さらに期間が延びることもあります。
・“治療=完了”ではなく“維持”を見据えた通院計画を
多くの患者さまに共通してお伝えしたいのは、歯周病治療は「治療が終わったら通院終了」ではないということです。
一度治療によって歯ぐきの状態が改善しても、歯周病は再発しやすいため、そこから「どうやって健康な状態を維持していくか」が重要になります。
このため、当院では治療終了後にメンテナンス期へと移行し、3ヶ月〜半年ごとに定期検診やクリーニングを行うことを推奨しています。これにより再発を防ぎ、治療効果を長く保つことができます。
特に、重度の歯周病だった方や、糖尿病・喫煙歴などリスク因子を持つ方は、より短い間隔での管理が必要となる場合があります。
歯周病は生活習慣や体質の影響も受けやすいため、“治ったら終わり”ではなく、“一生を通じてコントロールする病気”として考えることが大切です。
・焦らず、自分に合ったペースで取り組むことが大切
歯周病の治療には、時間も手間もかかります。それでも、焦って早く終わらせようとするよりも、ご自身のペースに合わせて、無理なく進めていくことが何より大切です。
とくに初期の炎症が強い時期には、まずは炎症を抑えてから次のステップに進む必要がありますし、外科処置が必要なケースでは、十分な治癒期間を取らないと再発リスクが高まります。
治療期間の途中で不安になったり、「本当に治るのかな…」と感じることもあるかもしれません。そんなときこそ、遠慮なく疑問を相談していただき、治療内容やゴールを一緒に確認していくことが大切です。
私たち歯科医療チームは、患者さまと二人三脚で、口腔の健康を守る伴走者でありたいと考えています。治療のゴールは「見た目」や「一時的な安心感」ではなく、「一生ご自分の歯で食べ、笑える毎日」を目指すことです。
歯ぐきの腫れやぶよぶよ感に気づいた今こそが、歯を守るチャンスです。
「治療は長そう…」と迷っている方も、まずは初診相談だけでも大丈夫です。
あなたのペースで、無理なく確実に健康を取り戻せるよう、私たちが丁寧にサポートいたします。
東京都品川区YDC精密歯周病インプラント治療専門ガイド
監修:医療法人スマイルパートナーズ 理事長/齋藤和重
『山手歯科クリニック大井町』
住所:東京都品川区東大井5丁目25−1 カーサ大井町 1F
『山手歯科クリニック戸越公園』
住所:東京都品川区戸越5丁目10−18
*監修者
*経歴
1990年 鶴見大学歯学部卒業。1991年 インプラント専門医に勤務。1999年 山手歯科クリニック開業。
2001年 INTERNATIONAL DENTAL ACADEMY ADVANCED PROSTHODONTICS卒業。
2010年 医療法人社団スマイルパートナーズ設立。
*所属
・ICOI国際インプラント学会 指導医
・ICOI国際インプラント学会 ローカルエリアディレクター
・ITI国際インプラント・歯科再生学会 公認 インプラントスペシャリスト
・日本口腔インプラント学会 会員
・日本顎顔面インプラント学会 会員
・国際審美学会 会員
・日本歯科審美学会 会員
・日本アンチエイジング歯科学会 会員
・INTERNATIONAL DENTAL ACADEMY ADVANCED PROSTHODONTICS(2001年)
・CID Club (Center of Implant Dentistry)所属
・国際歯周内科研究会 所属
・5-D JAPAN 所属
・デンタルコンセプト21 所属
・インディアナ大学歯学部 客員 講師
・南カルフォルニア大学(USC)客員研究員
・南カルフォルニア大学(USC)アンバサダー
・USC (南カルフォルニア大学)歯学部JP卒
・USC University of Southern California)センチュリー・クラブ
・プレミアム・メンバー
※詳しいプロフィールはこちらより