重度の歯周病で「虫歯治療ができない」と言われたらどうすればいい?
1. 「虫歯治療ができない」と言われて戸惑うあなたへ
・重度の歯周病で起こる現実
歯科医院で「重度の歯周病があるため、いまは虫歯治療ができない」と告げられると、驚きや不安で頭が真っ白になる方は少なくありません。これまで虫歯は削って詰めれば治せる、と考えていたのに、治療そのものを見送る判断が下される――このギャップが大きな戸惑いを生みます。重度の歯周病では、歯を支える骨(歯槽骨)と歯ぐきが大きく損なわれ、歯の動揺や出血、腫れが強く出ます。すると、たとえ虫歯を削って詰め物や被せ物をしても、その土台が揺らいでいるため長持ちしません。麻酔や器具による刺激で炎症が悪化したり、止血しにくかったり、細菌が深部へ広がる恐れもあります。「できない」という言葉は絶望の宣告ではなく、むしろ合併症を避けて安全に進めるための“段階を踏む判断”であることを、まず知っておいてください。
・虫歯治療ができないと言われる理由
重度の歯周病では、歯の周囲に深い歯周ポケットが形成され、プラークや歯石に潜む細菌が慢性的な感染源になります。この環境下で虫歯治療を行っても、出血と唾液で術野が汚染されやすく、レジンやセメントが十分に接着せず、治療の予後が不安定になります。さらに、歯を支える骨が大きく吸収していると、被せ物を装着しても噛む力に耐えられず、短期間で外れたり、歯根にヒビが生じたりするリスクが上がります。根管治療が必要な虫歯では、器具操作中に感染が拡大しやすく、治療後の再発率も高くなります。つまり、問題は「虫歯の穴そのもの」だけではありません。歯の土台となる支持組織が壊れているため、通常の虫歯治療を行っても成果が出にくく、合併症の危険が増す――これが「いまはできない」と判断される主因です。安全性と持続性を重視すれば、炎症の制御を先に行うのが合理的なのです。
・まず理解してほしい口腔内の状態
「できない」と言われた瞬間に諦める必要はありません。大切なのは、自分の口腔内で何が起きているのかを把握し、正しい順序で治療計画を立て直すこと。具体的には、全顎的な歯周検査(出血の有無、歯周ポケットの深さ、歯の動揺度)、エックス線評価で骨の残存量と感染の広がりを確認し、まずはプラークコントロールとスケーリング・ルートプレーニングで炎症を鎮めます。場合によっては歯周外科や再生療法で清掃性と支持組織を改善し、術野の出血・唾液汚染を減らせる環境を整えます。そのうえで、保存可能な歯/条件付きで保存できる歯/抜歯が妥当な歯を見極め、虫歯の優先順位と修復方法(レジン・インレー・クラウン・根管治療など)を再設計します。説明に不安が残るときは、歯周病と修復治療に詳しい歯科医師でセカンドオピニオンを受けるのも有効です。「治せない」のではなく、「今は治す条件が整っていない」。順序を正せば、虫歯治療に進める道は開けます。焦らず、まず炎症を抑えて“治療が長持ちする土台づくり”から始めましょう。
2. なぜ重度の歯周病では虫歯治療が難しいのか
・歯を支える骨や歯ぐきの破壊
重度の歯周病では、歯を支える骨(歯槽骨)や歯ぐきが大きく破壊されている状態にあります。健康な歯は骨と歯ぐきにしっかり固定されていますが、歯周病が進行するとその土台が失われ、歯がグラグラと動揺してしまいます。こうした状態では、虫歯を削って詰めたり被せたりしても、そもそも支えが弱いため治療後の歯が安定しません。いわば、基礎の崩れた建物にリフォームをしても長持ちしないのと同じです。歯科医師が「虫歯治療ができない」と判断する背景には、歯そのものよりも周囲の支持組織の損傷が大きいという現実があります。まずは歯周病治療で土台を回復させなければ、虫歯治療を行っても予後は期待できないのです。
・虫歯治療をしても土台がもたない
通常の虫歯治療では、歯を削り、詰め物や被せ物で形を補います。しかし、重度の歯周病で歯の揺れが強い場合、治療しても噛む力に耐えられず、短期間で詰め物が外れたり歯が割れてしまうリスクがあります。特にクラウン(被せ物)を装着した場合、噛むたびに力が加わることで歯の動揺が悪化し、最終的には抜歯に至るケースもあります。さらに、歯周病によって歯根の露出が進んでいると、削った部分の接着力が十分に発揮されず、修復物が外れやすくなります。つまり、虫歯治療そのものが無意味になるわけではありませんが、土台が不安定な限りは「長持ちしない治療」に終わってしまう可能性が高いのです。そのため、歯科医師はまず炎症を抑え、支持組織を安定させてから虫歯治療に進むことを推奨するのです。
・感染拡大のリスク
もうひとつの大きな問題は、感染の拡大です。重度の歯周病では、歯ぐきの深い部分にまで細菌が侵入し、膿や強い炎症が見られることもあります。この状態で虫歯の治療を行うと、器具操作や出血をきっかけに細菌がさらに奥へと広がり、治療後に腫れや痛みが強く出ることがあります。また、根管治療が必要な虫歯の場合、根の先まで細菌感染が波及しやすく、治療の成功率が下がります。虫歯を治したつもりでも、周囲の歯周病が悪化して歯を失う結果になることも珍しくありません。安全に虫歯を治療するためには、まず歯周病を治療して口腔内全体の炎症レベルを下げることが不可欠です。歯周病を無視して虫歯治療を行うことは、短期的な応急処置にはなっても、長期的な解決策にはならないのです。
3. 「治療できない」と言われたときの第一歩
・セカンドオピニオンを受ける大切さ
歯科医院で「重度の歯周病があるため、虫歯治療ができない」と言われたとき、まず心に浮かぶのは「本当にそうなのだろうか」という疑問でしょう。歯科治療には複数の考え方や治療方針が存在します。歯周病の進行度合いや残っている骨の状態によっては、別の歯科医師が異なるアプローチを提案することもあり得ます。そのため、一つの意見だけで諦めるのではなく、セカンドオピニオンを受けることは非常に有効です。特に歯周病専門医や保存治療に力を入れている歯科医院で相談すれば、自分では気づかなかった治療の選択肢が見えてくる場合もあります。複数の意見を聞くことは「自分に合った最適な道」を選ぶための第一歩であり、後悔のない決断につながります。
・歯周病専門医に相談する意味
「虫歯治療ができない」と判断される背景には、歯周病による支持組織の崩壊があります。つまり、問題の根本は虫歯そのものではなく、歯を支える歯ぐきや骨の状態にあります。そのため、歯周病に詳しい専門医へ相談することが重要です。専門医であれば、徹底した歯周検査やエックス線評価を行い、虫歯を治療できる環境を整えられるかどうかを判断してくれます。また、骨や歯ぐきの再生治療が可能かどうかの診断も行えるため、通常の治療で「できない」とされたケースでも、再チャレンジの可能性が開けることがあります。重度の歯周病を抱えている方にとって、専門的な視点からの助言は「残すべき歯」と「諦めるべき歯」を冷静に見極める助けとなるのです。
・状況を客観的に確認すること
「治療できない」と言われたときに最も避けたいのは、感情的にショックを受けたまま何も行動せず、時間だけが経過してしまうことです。歯周病も虫歯も時間が経つほど悪化し、選択肢が減ってしまいます。まずは自分の口の中の状態を客観的に把握することが大切です。歯周ポケットの深さ、歯の動揺度、骨の吸収状態などを検査データとして確認し、それがどの程度のリスクを意味するのかを理解しましょう。客観的な数字や画像を把握すれば、不安だけでなく現実的な解決策も見えてきます。そして「いまは虫歯治療ができない」と言われても、歯周病をコントロールできれば再び治療のチャンスが訪れる可能性があります。現状を正しく理解し、改善のための行動を起こすことこそが、本当の第一歩になるのです。
4. 重度歯周病への基本的なアプローチ
・プラークコントロールの徹底
重度の歯周病に立ち向かう第一歩は、毎日のプラークコントロールです。歯周病も虫歯も、原因の多くは歯垢(プラーク)に潜む細菌です。重度歯周病の患者さんの多くは、歯ぐきが腫れて出血しやすい状態にあり、磨くのが痛くて十分に清掃できないことも少なくありません。しかし、ここで清掃を怠ると炎症はさらに進行します。正しい歯磨きの方法を歯科衛生士から学び、歯間ブラシやフロスを取り入れることで、細菌の温床を減らすことができます。毎日の積み重ねによって炎症を抑えることが、後の治療効果を高めるための必須条件です。「重度の歯周病だから虫歯治療ができない」と言われた場合でも、プラークコントロールを徹底すれば治療の可能性が広がります。
・スケーリングやルートプレーニング
日常のブラッシングでは除去できない歯石や細菌の塊は、専門的な処置によって取り除く必要があります。その代表がスケーリングとルートプレーニングです。スケーリングでは歯の表面や歯周ポケット内の歯石を徹底的に除去し、ルートプレーニングでは歯の根の表面を滑らかにして細菌の再付着を防ぎます。これにより、歯ぐきの炎症は徐々に落ち着き、出血や腫れが改善されます。重度の歯周病では1回の処置だけでは足りず、数回に分けて時間をかけて行う必要がありますが、この基本治療を繰り返すことで歯ぐきが引き締まり、虫歯治療や補綴治療を進めるための環境が整います。土台を改善しなければ、どんなに虫歯を治療しても再び悪化するリスクが高いのです。
・外科処置や再生療法の可能性
重度の歯周病では、基本治療だけでは炎症を完全に抑えきれない場合があります。その際に検討されるのが外科処置です。代表的なのはフラップ手術で、歯ぐきを開いて深い部分の歯石や感染組織を直接取り除きます。さらに、骨の吸収が大きい場合には再生療法が選択されることもあります。特殊な再生材料や人工骨を用いて骨や歯周組織を再生させることで、歯を支える力を取り戻せる可能性があります。これらの治療を経て炎症が抑えられ、歯の動揺が減れば、虫歯治療を含めた補綴治療が現実的に進められる段階に移行できます。「重度の歯周病で虫歯治療はできない」と最初に言われたとしても、適切な外科処置や再生療法を組み合わせることで状況は変わり得るのです。諦めるのではなく、段階的にアプローチしていく姿勢が大切です。
5. 虫歯よりも歯周病治療が優先される理由
・感染源を取り除くことが先決
歯科医院で「重度の歯周病があるため、まずは歯周病治療を優先しましょう」と言われると、「虫歯があるのにどうして治してもらえないのか」と不安になる方も多いでしょう。しかし、その背景には医学的な明確な理由があります。歯周病は口腔内に慢性的な感染を抱えている状態であり、この感染源を取り除かないまま虫歯治療を行っても、治療の効果は長続きしません。歯周病菌が歯ぐきや骨に炎症を広げていると、出血や膿によって術野が不潔になり、虫歯治療で用いる詰め物や被せ物の接着力が低下してしまいます。治療をしても外れやすく、再感染のリスクも高まるのです。そのため、まずは歯周病をしっかり治し、口腔内の感染をコントロールすることが先決とされるのです。
・歯周病を治療しなければ虫歯も安定しない
歯周病と虫歯は別の病気のように思われがちですが、実際には深い関わりがあります。歯周病が進行すると歯がグラつき、噛み合わせが安定しなくなります。そうすると詰め物や被せ物に過剰な力がかかり、せっかく治した虫歯がすぐに壊れてしまうこともあります。また、歯周ポケット内に細菌が多く存在するため、治療後の歯の根元から再び虫歯が発生しやすくなります。つまり、歯周病を治さなければ、虫歯治療そのものが安定せず、短期間で再治療が必要になる悪循環に陥りやすいのです。虫歯治療の成功を長期的に維持するためには、まず歯周病をコントロールすることが欠かせません。歯周病の改善が、虫歯の再発予防や補綴物の長持ちにも直結するのです。
・長期的な歯の保存のために
短期的な視点で見れば「痛い虫歯を先に治したい」と思うのは当然です。しかし、長期的な視点に立つと歯周病治療を優先する方がはるかに有利です。歯周病を治療しないまま虫歯を詰めても、土台が崩れていればいずれ歯を失ってしまいます。反対に、歯周病を治療して歯ぐきと骨を安定させれば、虫歯治療も確実に行うことができ、治療した歯を長く残せるようになります。さらに、歯周病治療は口腔内全体の環境を改善するため、ほかの歯を守る効果も期待できます。「重度の歯周病で虫歯治療ができない」と言われた場合、それは「まずは土台を整えてから次のステップに進みましょう」という前向きな提案なのです。今を優先するのではなく、未来の歯を守るための戦略として、歯周病治療を優先することが何より大切です。
6. それでも残せない歯がある場合
・抜歯という選択肢を受け入れる場面
重度の歯周病では、どれだけ治療を行っても歯を残すことが難しいケースがあります。歯が大きく揺れていたり、歯を支える骨がほとんど吸収されている状態では、虫歯治療や補綴処置をしても長期的に安定することは期待できません。歯科医師から「この歯は抜歯が望ましい」と説明を受けると、ショックを感じる方も多いですが、無理に残すことでかえって炎症が広がり、周囲の歯や骨に悪影響を及ぼす可能性があります。抜歯は決して諦めではなく、口腔全体の健康を守るための前向きな選択肢と考えるべきなのです。
・無理に残すデメリット
「できるだけ歯を残したい」という気持ちは誰もが抱くものです。しかし、重度の歯周病で支持組織が崩壊している歯を残すことは、しばしば大きなリスクを伴います。動揺の強い歯を土台にして被せ物やブリッジを作っても、噛むたびに負担が集中し、さらに骨の吸収を早める結果となります。また、慢性的な炎症を抱えたまま無理に残せば、膿や感染が周囲に広がり、他の健康な歯まで失うリスクを高めます。つまり「残すこと自体」が必ずしも正しい選択ではなく、全体の予後を考えれば抜歯した方が良い場合があるのです。歯科医師が「この歯はもう持たない」と判断するのは、長期的に見て患者さんの健康を守るための冷静な提案なのです。
・将来を見据えた判断の重要性
歯を抜くかどうかの判断は、単に「今の歯を残すか失うか」だけではありません。その後の治療計画全体に関わる大切な分岐点です。たとえば、どうしても残せない歯を抜歯することで炎症の原因が取り除かれ、残っている歯の状態が安定することがあります。さらに、その後に入れ歯やブリッジ、インプラントといった補綴治療を計画することで、噛む力や見た目を回復することができます。大切なのは「抜歯=終わり」ではなく「次のステップへの準備」と考えることです。歯を失うこと自体は残念なことですが、将来的に残りの歯や全体の口腔機能を守るためには、あえて抜歯を選ぶ勇気も必要になります。重度の歯周病で虫歯治療ができない場合でも、適切な判断と治療計画によって未来の選択肢は広がっていきます。
7. 歯を失った後の選択肢
・入れ歯で補う場合
重度の歯周病で歯を残せず抜歯に至った場合、多くの方がまず検討するのが入れ歯です。入れ歯は比較的短期間で作製でき、費用も他の方法に比べて抑えられるというメリットがあります。部分入れ歯であれば残っている歯に金具をかけて固定し、総入れ歯であれば歯ぐき全体で支える仕組みになります。ただし、違和感や噛む力の低下を感じやすく、慣れるまでに時間がかかることも少なくありません。また、金具が見えて見た目に影響する場合や、支えにしている歯へ負担がかかるというデメリットもあります。とはいえ、しっかりメンテナンスを行えば口腔機能を補う有効な手段であり、まずは一時的に入れ歯を選んで、その後の治療計画を見直すケースもあります。
・ブリッジで補う場合
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って支台とし、連続した人工歯を橋渡しのように固定する治療法です。入れ歯よりも違和感が少なく、固定式なので装着感も自然であることが特徴です。しかし、支台となる歯を大きく削る必要があるため、健康な歯にダメージを与えてしまうのが最大のデメリットです。また、歯周病で支えの歯の状態が弱っている場合、ブリッジの安定性が損なわれる可能性があります。清掃も難しく、ブリッジの下や隙間に汚れが溜まりやすいため、セルフケアを徹底しないと虫歯や歯周病の再発リスクを高めてしまいます。ブリッジは便利な治療法ですが、残っている歯の状態や今後の歯周病リスクを考慮しながら慎重に検討する必要があります。
・インプラントを検討する場合
近年、多くの方が選択肢として考えるのがインプラントです。インプラントは顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療で、天然の歯に近い噛み心地と見た目を取り戻せるのが大きな魅力です。両隣の歯を削らずに済み、支える歯への負担がない点もメリットです。ただし、重度の歯周病を経験した方がインプラントを希望する場合、条件が整っているかを慎重に見極める必要があります。骨量が不足している場合には骨造成が必要になることもあり、治療期間は長くなる傾向があります。また、インプラント自体も「インプラント周囲炎」という歯周病に似た病気にかかるリスクがあるため、治療後のメンテナンスが欠かせません。歯周病をしっかり治療し、口腔内環境を整えたうえで取り組むことで、インプラントは長期的に機能する可能性が高まります。抜歯後の選択肢としてインプラントを考える場合は、費用や期間、将来のメンテナンスまで含めて歯科医と十分に相談することが大切です。
8. 重度歯周病の方がインプラントを考えるとき
・インプラントが可能になる条件
重度の歯周病を経験した方でも、口腔環境を整えることでインプラント治療を選択できる場合があります。ただし条件があります。まず歯周病の炎症が完全にコントロールされていること、そして歯を支える顎の骨が十分に残っているか、または骨造成によって補えることが必要です。歯周病を治療せずにインプラントを入れると、歯周病と似た病気であるインプラント周囲炎を発症しやすく、数年で脱落してしまうリスクが高まります。したがって、「治療を終えて安定していること」が前提条件となります。歯科医師による歯周検査やエックス線検査で骨や歯ぐきの状態を確認し、条件が整っているかどうかを慎重に判断する必要があります。
・骨や歯ぐきの再生治療の必要性
重度の歯周病では、歯を支える骨が大きく吸収してしまっているケースが多く見られます。そのままではインプラントを埋め込む十分な土台がなく、治療を進めることはできません。そこで骨造成や歯周組織再生療法が検討されます。骨造成には、自家骨移植や人工骨を用いて骨の厚みや高さを補う方法があり、上顎洞の位置を持ち上げて骨を再建するサイナスリフトやソケットリフトなどの技術も用いられます。また、歯ぐきが薄い場合には歯肉移植を行うこともあります。こうした処置を行うことでインプラントを支える環境を作り、治療の可能性を広げることができます。つまり、重度の歯周病を経験した方がインプラントを考える場合、単に人工歯根を埋め込むだけではなく、事前の再生治療が重要な鍵となるのです。
・メンテナンスを継続する覚悟
インプラントを成功させるためには、治療後のメンテナンスを継続する覚悟が欠かせません。特に重度の歯周病を経験した方は、再発のリスクが高く、口腔内の管理を怠ればインプラントも同じように炎症を起こしてしまいます。毎日の丁寧なブラッシング、フロスや歯間ブラシの使用はもちろん、歯科医院での定期的なクリーニングと検査を続けることが必要です。また、喫煙や糖尿病といったリスク因子がある場合は、そのコントロールも重要になります。インプラントは「入れて終わり」ではなく、「入れてからがスタート」です。治療後にどれだけ自己管理と歯科医院でのメンテナンスを継続できるかが、成功を左右します。重度の歯周病を経験した方がインプラントを考える際には、この点をしっかり理解し、覚悟を持って取り組むことが大切です。
9. 今ある歯を守るためにできること
・定期的な歯科検診とクリーニング
重度の歯周病で歯を失った方も、残された歯を守ることは可能です。そのために欠かせないのが、定期的な歯科検診と専門的なクリーニングです。歯周病や虫歯は自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行してしまう病気です。特に「虫歯治療ができない」と言われるほど歯周病が進んでいた方は、再発リスクも高いため、数か月に一度の検診が強く推奨されます。歯科医院で歯石やプラークを除去し、歯周ポケットの深さをチェックすることで、病気を早期に発見し対応できます。定期的な通院は「治療の場」ではなく「予防の場」として活用することが大切です。
・セルフケアの徹底
歯科医院でのプロフェッショナルケアに加えて、日常生活でのセルフケアが今ある歯を守る最大の武器になります。正しいブラッシングはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスを併用し、歯と歯の間や歯ぐきの境目に残る汚れを丁寧に取り除く習慣をつけましょう。また、フッ素入り歯磨き粉を用いることで虫歯の再発防止にもつながります。歯周病と虫歯は同じ細菌性の病気であり、口腔内の清掃不良が共通のリスク要因です。日々のケアを怠れば再び「虫歯治療ができない」と言われるような状態に戻ってしまう可能性もあるため、自分自身でコントロールする意識が必要です。
・生活習慣の見直し
口腔の健康は、生活習慣とも深く関わっています。喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つであり、血流を悪化させることで治療の効果を下げ、再発を早めてしまいます。糖尿病も歯周病と相互に悪影響を及ぼし、血糖コントロールが不良な状態では炎症が進みやすくなります。また、過度の飲酒や偏った食生活も免疫力を下げ、歯周病や虫歯のリスクを高めます。今ある歯を守るためには、歯磨きだけでなく生活習慣全体を見直すことが必要です。バランスのとれた食事、十分な睡眠、ストレスコントロールも健康な歯ぐきを維持するための重要な要素です。つまり、「治療」ではなく「予防」を生活の一部に取り入れることが、長く歯を守るための鍵になるのです。
10. 「虫歯治療ができない」と言われても諦めないで
・歯周病治療を経て未来を変えることができる
歯科医院で「重度の歯周病があるため虫歯治療はできない」と告げられたとき、多くの方は絶望感を抱いてしまいます。しかし、この言葉は「もう治療の余地がない」という意味ではありません。むしろ「歯周病を治すことが優先です」という前向きなメッセージなのです。炎症をコントロールし、歯ぐきや骨の状態を改善することで、虫歯治療に進むための環境を整えることが可能になります。歯周病治療は時間と努力を要しますが、その過程で口腔内全体の健康が改善し、結果的に虫歯治療も成功しやすくなります。つまり、歯周病を治すことはゴールではなく、未来の治療への大切なステップなのです。
・状態に合わせた治療計画は必ずある
たとえ「虫歯治療ができない」と一度は言われても、状態に応じた治療計画は必ず存在します。歯周病が進行していても、まず基本治療で炎症を抑え、場合によっては外科的治療や再生療法を組み合わせることで歯を残せる可能性が高まります。それでも保存が難しい歯については抜歯を検討することになりますが、その後には入れ歯・ブリッジ・インプラントといった補綴治療の選択肢があります。重要なのは「すべての歯を残す」ことに固執するのではなく、「口腔全体の健康をどう守るか」という視点で治療計画を立てることです。状況に合わせた最善の道を選ぶことで、快適な生活を取り戻すことは十分に可能です。
・専門医と二人三脚で前向きに取り組む
重度の歯周病で虫歯治療ができないと判断された場合、一人で悩み続けるよりも、歯周病や補綴治療に詳しい専門医と相談しながら進めることが大切です。歯科医師は患者さんの生活背景や希望も踏まえ、現実的で実行可能な治療プランを提案してくれます。また、治療後も定期的なメンテナンスを続けることで、再発を防ぎ、長期的に歯や補綴物を守ることができます。患者さん自身もセルフケアを徹底し、生活習慣を整えることで治療の成果を高めることができます。専門医と二人三脚で取り組めば、「治療できない」と言われた状況からも確実に改善の道は開けます。大切なのは、諦めることではなく、前向きに一歩を踏み出す勇気です。
今、この瞬間の気づきが、10年後のあなたの笑顔を守る一歩になります。
出血に気づいた「今」が、まさに受診のタイミングです。
東京都品川区YDC精密歯周病インプラント治療専門ガイド
監修:医療法人スマイルパートナーズ 理事長/齋藤和重
『山手歯科クリニック大井町』
住所:東京都品川区東大井5丁目25−1 カーサ大井町 1F
『山手歯科クリニック戸越公園』
住所:東京都品川区戸越5丁目10−18
*監修者
*経歴
1990年 鶴見大学歯学部卒業。1991年 インプラント専門医に勤務。1999年 山手歯科クリニック開業。
2001年 INTERNATIONAL DENTAL ACADEMY ADVANCED PROSTHODONTICS卒業。
2010年 医療法人社団スマイルパートナーズ設立。
*所属
・ICOI国際インプラント学会 指導医
・ICOI国際インプラント学会 ローカルエリアディレクター
・ITI国際インプラント・歯科再生学会 公認 インプラントスペシャリスト
・日本口腔インプラント学会 会員
・日本顎顔面インプラント学会 会員
・国際審美学会 会員
・日本歯科審美学会 会員
・日本アンチエイジング歯科学会 会員
・INTERNATIONAL DENTAL ACADEMY ADVANCED PROSTHODONTICS(2001年)
・CID Club (Center of Implant Dentistry)所属
・国際歯周内科研究会 所属
・5-D JAPAN 所属
・デンタルコンセプト21 所属
・インディアナ大学歯学部 客員 講師
・南カルフォルニア大学(USC)客員研究員
・南カルフォルニア大学(USC)アンバサダー
・USC (南カルフォルニア大学)歯学部JP卒
・USC University of Southern California)センチュリー・クラブ
・プレミアム・メンバー
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